玉抜き

 或ネットニュースに、北海道畜産試験場HPの、牛用簡易去勢器具「楽チン」という記事が載っています。記事の後ろに「従来法は5分で今は1分、てところで気絶しそうになった」という感想や、「輪ゴムできつく縛ると血行不良で腐って落ちるんじゃなかったんだ」という感想が述べられています。
 例の爺さんに話しましたら、心当たりが有るとかで、満州引揚者の知人に聞いたという蘊蓄を伝えて呉れました。
 其人は昭和10年頃から満州の田舎に住んで居て、現地の農業の実態に詳しい方らしいのです。現地人の農家は中2階がトイレで、直下は豚小屋で、豚は通常の残飯と雑穀をを煮直した飼料の他に、落ちて来る人の糞便も食べていたとか。雄の豚は、繁殖用を除き、凶暴性が出ない様に「玉抜き」をします。何人かで雄豚を仰向けに押さえ付け、一人が両手で睾丸袋を両手で包んで持ち上げます。もう一人が、袋の根元に細い麻紐を回して紐の先を一度内側に通し、緩く絞めた後に、一気にギュッと縛ります。雄豚は物凄い声を上げて暴れようとしますが、委細構わず、麻紐を2, 3回固く結んでから、息を合わせて、雄豚をヒョイと隅の方に放り投げます。其侭で何日かすると、睾丸袋は壊死してポロリと落ちます。
 「雄豚の物凄い声」で、私も思い出した事があります。小学校の4年生に成ってからの体育の時間だと思いますが、平均台の端から端迄歩くという課題が有りました。足を滑らせて平均台を跨ぐ形で落ち、悪くすると、睾丸を潰し損なって、本当に気絶する程の痛みに息が詰まり、声も出なかったのです。