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墓の原

 例の爺さんは10歳を越えた許りの頃、相当な田舎に住んでいました。薪を使う火葬場が有ったと言いますから、或程度は大きな村だったのでしょう。
 或晩、爺さんは親の言い付けで、夜の10時過ぎにお使いに出掛けるの止む無きに至りました。道は一本しか無く、墓場の有る原を通っていました。怖いんですが、仕方有りません。月の光を頼りに歩きました。道の1/3を過ぎた頃、林立する墓石を見て、少年は体中がブルッと震えました。けれども、話に聞いた火の玉は見えません。変な匂いもしなければ、変な声も聞こえません。目をつぶる様にして墓地を抜けました。
 以来、少年は爺さんに成る迄、墓地は怖いんですが、怯える程では無くなりました。現在に至る迄、幽霊にも逢いませんし、幻聴も有りません。
 「俺ゃ、ドタマも相当に鈍いから、幽霊も出るに出られないんだべし」と笑っています。