函館の老人

 例の爺さんが20年前に函館の友人を訪ねた時の事。其時の感想やら・・・

 変わらないのは函館の老人で、今でも札幌を「奥地」と呼び、北海道の首都としての発展を苦々しい思いで眺めて居るらしい。札幌を「奥地」と呼ぶんだから根室は「地の果て」だろう。其昔は鰊の群来(くき)で大いに繁栄し「江差の五月は江戸にも無い」と謳われた江差の老人は今の函館を如何思って居るのだろうか。函館は老人の保守的抵抗が強く、若い経営者の革新思想が容れられないので発展の遅い所が、知る人ぞ知る有名な街である。
 函館と言えば益田喜頓と言う函館出身の喜劇俳優が居る(アタシの註=平成5年に84歳で死去)。バスター・キートンのモジりは自明だが極めて真面目な俳優だった。戦後の喜劇俳優や芸人の中では珍しく、自らは笑わずに観客の笑いを誘う一級品で、最近の芸人には斯う言う傑物は一人も居ない。一寸売れると直ぐ天狗に成る歌手や芸人はゴマンと居るが。