凍結受精卵

 2人は2004年に結婚した。約7年前にクリニックで不妊治療を始め、体外受精で複数の受精卵を凍結保存した。女性は受精卵を順に移植し、2011年に長男が生まれた。
 2人は2013年秋から、関係が悪化して別居。女性は2014年春以降、クリニックに凍結保存された残りの受精卵を数回にわたって移植し長女を出産した。
 クリニックは2人が治療を始めた2010年に一度だけ移植への同意を確認する書面を作ったが、以降はこの手続きを省いた。
 男性側は昨年12月、奈良家裁で開かれた第1回口頭弁論で「同意がない移植による出産を民法は想定しておらず、血縁を理由に親子関係を認めるべきではない」と主張。女性側は無断で移植したことを認める一方、「親子関係を否定する法律は無い」として争う姿勢を示した。
 体外受精を巡っては❮❮国内に同意手続きを定めた法律は無い❯❯。一方、日産婦は不妊治療を行う全医療機関に対し、倫理規定で移植毎に夫婦の同意を確認するよう求めている。
 元日産婦理事長の吉村泰典・慶応大名誉教授は「受精卵は夫婦のもので、使用には双方の同意が不可欠だ。今回のケースが事実ならば、院長の行為は内規違反でお粗末だ」と語った。http://mainichi.jp/articles/20170104/k00/00m/040/140000c