非常電源

非常電源の点検義務が形骸化 病院やホテル…災害時の“命綱” 未実施でも行政黙認か

2017年11月19日 6時0分 西日本新聞

 災害に伴う停電時に、スプリンクラーや屋内消火栓などの消防用設備を動かす非常電源(自家発電設備)について、病院やホテルなど不特定多数が出入りする特定防火施設の多くが、国の点検基準で義務付けられた負荷運転を実施していない恐れがあることが分かった。消防法に基づき点検結果の報告を受ける消防当局も事実上、基準違反を長年見過ごしていた。消防庁は昨年末の通知で是正を求め、福岡市など各政令市は指導を強化した。

 負荷運転は、非常電源を実際に動かして送電を確認する作業。屋内消火栓などを備える延べ床面積千平方メートル以上の特定防火施設などは、停電時の消防用設備の作動を確実にするため年1回、負荷運転による非常電源の点検と報告が義務付けられている。

 福岡市への情報公開請求で西日本新聞が入手した同市中央区の対象240施設の直近の非常電源の点検票を調べると、「負荷運転を実施」と報告したのは47%の113施設。残る127施設は未実施とみられ、点検結果を書く欄に斜線が引かれていたり、適切でない無負荷運転で点検したことが明記されたりしていた。高額の費用などが敬遠されたとみられる。

 非常電源の問題に詳しい仙台市の佐藤正昭市議は「従来、未実施でも全国的に黙認に近い状態だった」と指摘。福岡市消防局の担当者も「点検票の確認が甘いと言われれば、そうかもしれない。今は確認を徹底している」と話す。

 この問題を巡っては今年6月、衆院内閣委員会で質疑があった。「実際に(負荷運転を)やったか分からない報告書(点検票)だらけと指摘されている。本当か」との質問に、消防庁の審議官が「一義的には(所轄の)消防本部で適切に対応すべきと考える。全国の担当者会議などで周知を行っている」と答弁した。

 消防庁予防課の話 20~30年以上も前から負荷運転が未実施だったわけではないと思うが、消防として見過ごしてきた部分はある。消防庁が通知を出し、現場の消防本部も対応を強化した。後追いにはなるが、今はきちんとチェックされており、改善の兆しが見えている。=2017/11/19付 西日本新聞朝刊=