リストラされた老人

http://news.livedoor.com/article/detail/13211181/ から

 『スタートアップ・バブル 愚かな投資家と幼稚な起業家』を書いたダン・ライオンズの意見。
 リストラされた老人が若いスタートアップ企業に勤めると、どのような扱いを受け、それをどう感じたかを、自身の心情として、事細かに書いている点も読み所だ。

此本には、二つの教訓がある。

 第一に、特にIPO(株式公開)を目指している、あるいはそこに漕ぎ着けたスタートアップ企業は、一種の「金融商品」であるという認識の重要性だ。彼の理解の下でだが、著者にとって、その会社は一部のズルイ人と、彼らに体よく使われているおめでたい(主に)若者社員の集積体だった。金融商品としてのスタートアップ企業を成功させるためには、企業自身が本業で利益を稼ぐことよりも、「成長イメージ」と「(株式での)投資のリターン」だけ強調する傾向が有る事に、投資家の方も気付くべきだろう。

■日本だって同じ

 日本にも、この本に書かれたハブスポット社を小さくしたようなIT企業風のベンチャー企業はあり、筆者は、その会社で働く知人を通じて内情を知らなくもない。近い将来仮にIPOまで漕ぎ着けたとして、この会社の株をIPOで買うのは「気の進まない投資」であると言わざるを得ない。
 金融政策の節目を考えると、2005年のライブドア・ショック以来盛り上がりに欠けていた日本のIPO市場も、今後しばらく賑わう可能性がある。しかし、ベンチャー投資・IPO投資にあっては、「いきなり終わりの笛が鳴る」展開となるリスクは、常に認識しておくべきだ。

■オジサンはプライドを持て余す

 今後、日本でも、著者のように「生活が掛かっている」状況で、若者の多い会社に再就職する中高年者が増えるはずだと思うが、そうした中高年者本人にとって、あるいは中高年者を使う側にとっても、厄介でもあり、重要でもあるのは、中高年者の「プライド」であることが本書を読むとよく分かる。

■強烈なエピローグ

 日本にいる我々も「自分は、不用意なのかも知れない」と思うべきシステムやサービスとの付き合いは少なくない。自分の消費や金融行動に関するデータを、誰にどこまで持たせて良いものなのか、一度、改めて見直しする機会を持つべしと筆者も思った。

 読者に対して、様々な「考える材料」を与える書籍だと思う。軽く読み流せる本ではないが、高齢者の再就職や、IPO投資に興味のある方には、是非ご一読をお勧めする次第だ